低髄液圧症候群の症状とむちうちとの関係性について
1 低髄液圧症候群について
低髄液圧症候群とは,脳から脊髄にかけて循環している脳脊髄液が漏れることで,起立時の頭痛やめまいが生じる症例のことをいいます。
低髄液圧症候群の症状の発生機序について,以下に,もう少し詳しくご説明いたします。
まず,この症状を理解するためには,前提として,頭蓋骨内の脳及び脳脊髄液の関係を理解する必要があります。頭蓋骨内の脳及び脳脊髄の関係は,しばしば,スーパーマーケットなどに陳列されている豆腐のパックに例えられます。この場合は,頭蓋骨はパックの容器に,脳は豆腐に,脳脊髄液はパックの中に満たされた水に相当します。頭蓋骨のなかで,脳は脳脊髄液という液体の中に浮いている状態であり,その様子は,豆腐パックの容器の中に満たされた水に,豆腐が浮いている状況をイメージすると理解しやすいと思います。
低髄液圧症候群では,何らかの理由で,この脳脊髄液が漏れ出てしまうことで,脳が頭蓋骨内で沈んでしまい,それにともなって頭痛やめまいなどがあらわれるものと考えられています。
2 低髄液圧症候群の症状とむちうちとの関係性
なお,むちうちの患者が訴える,頭痛,めまい,倦怠感等の多彩な症状は,脳脊髄液の漏出によるのではないかという見解もございます。
しかし,上記見解には「そもそも,交通事故により脳脊髄液の漏出が生じるのか。」,「脳脊髄液の漏出がないにもかかわらず,むちうちの症状を訴える患者がいるのではないか。」といった否定的な見解も根強くあるところです。
現在の交通事故に関する裁判例の動向を見る限り,交通事故とむちうちの間の因果関係については比較的容易に認定されている半面,交通事故と低髄液圧症候群の因果関係については否定されることも少なくありません。