むちうちになった場合の休業損害
1 2つの休業損害
むちうちになった場合の休業損害は、大きく分けて、主婦(主夫)における休業損害と、主婦以外の業務に従事している方における休業損害の2つに分かれます。
そして、それぞれ、休業を証明するための証拠や損害額の算定方法が異なります。
2 主婦の休業損害について
⑴ 主婦の場合、お勤めの方と異なり、給与等を得ているものではなく、休業証明をしてくれる方もおりません。
また、症状の程度(軽重)により、稼動できる家事の範囲に差異があるのが通常です。
⑵ このため、休業損害の前提となる収入については、女子労働者の平均賃金に基づいて算定することとされています。
いわゆる兼業主婦の方については、お勤め先の年収と、女子平均賃金のいずれか高い方を基準として、休業損害を算定することとされています。
また、お勤めの方と異なり、休んだ日と休まなかった日との区別が明確ではありません。
一口に家事労働といっても、風呂掃除や布団干しなど、比較的体力をつかうものから、裁縫のような軽作業まで、様々な作業があり、症状が改善するに従って、稼動できる家事の範囲が広がっていくためです。
そのため、症状が重いときには全く家事ができないものとして、平均賃金の日額(1日当たりの金額)が休業損害となりますが、症状が軽減するに従って、日額の一部にとどめるとするのが一般的です。
3 主婦以外の休業損害について
⑴ お勤めの方については、雇用先から提出される休業損害証明書を基に、休業損害を算定します。
事故によるけがや通院のために有給休暇を取得した場合も、休業損害として賠償されます。
事故により有給休暇の使用を余儀なくされ、休暇に対する権利を奪われてしまった、との考えによるものです。
これに対し、事故と無関係の休暇は、休業損害証明書に休暇の事実が記載されていても、賠償の対象にはなりませんので、ご注意ください。
⑵ 経営者や自営の方については、入院などのように全く稼動できない場合は休業損害を請求できますが、時間休の場合は請求が困難な場合が多いです。
お勤めの方は、所定の時間(雇い主からの指示に基づく時間)に働けなかったことがそのまま減収につながるのに対し、経営者などの場合は、稼動すべき時間の定めがなく、仮にある時間稼動しなかったとしても、他の時間帯において、自らの稼動によりその分を取り戻すことができる立場にあるためです。
4 休業期間について
むちうち症の軽重は、事故により千差万別なので、一定の休業期間が定まっているものではありません。
ただ、受傷後の経過として、事故からしばらくの間が症状が重く、その後徐々に軽快に向かうのが通常です。
このため、休業期間・日数が徐々に減少していくのが通例です。
事故後間もなくの期間であれば、症状が重いことを理由として全休とすることが認められることも多いですが、事故日から離れた時期においては、通院日における休業のみ、休業損害として認められるにすぎません。
5 おわりに
むちうち症は、その症状が目に見えるものではないため、これを前提とした必要な休業期間がどのくらいかについて、判断することが難しいのが実情です。
適正な休業損害を賠償してもらうためには、専門家である弁護士に相談されることをお勧めします。