むちうちと赤本基準
1 むちうちという呼び方
交通事故で首等を痛めた場合,「むちうち」という言葉が頻繁に用いられますが,「むちうち」とはあくまで俗称で,正確な病名としては,「頚椎捻挫」「外傷性頚部症候群」等です。
追突事故で頚椎が過度に伸展・屈曲する様が,鞭がしなる様子に見えなくもないことから,「むちうち」と呼ばれるようになったのではないかと思われます。
もっとも,過度に伸展・屈曲する程の規模ではない事故(低速度衝突)や,追突ではない側面衝突の事故でも,首の痛み等は頻繁に生じています。
また,首の痛みだけでなく,上腕から手指の痛み・しびれ・脱力感,頭痛,めまい,耳鳴り,吐き気,倦怠感等,様々な症状が発現することがあります。
このようなことから,「むちうち」という呼称と実態とがかい離しているような気がしてなりません。
2 むちうちに関する赤本の基準
むちうちは,基本的に,骨折・脱臼等を伴うものではなく,損害賠償の交渉の局面においては低くみられる傾向があります。
日弁連交通事故相談センターが発行している損害賠償額算定基準,いわゆる赤本によれば,むちうちで他覚所見がない場合等の入通院慰謝料の算定は別表Ⅱを使用すると書かれており,別表Ⅰに比べて低めの水準が規定されています。
むちうちの症状でも個人差があり,骨折・脱臼以上の痛みに苦しんでいる方もいらっしゃいますが,赤本別表Ⅰで算定されることはほとんどありません。
MRIによって,頚椎に変性やヘルニアが確認されることもありますが,これらは日常生活や加齢によっても生じ得ることから,交通事故が原因とまで断定することが困難な場合が少なくなく,やはり赤本別表Ⅱでしか認められないことが大半を占めます。
もっとも,赤本別表Ⅱの基準を用いても,いわゆる自賠責基準や任意保険・共済基準よりも高めの慰謝料が算出される場合が多いです。
被害者個人で交渉に臨んでも,相手方保険会社・共済が赤本別表Ⅱの使用を認めることは容易でないことが多いため,弁護士に委任して,慰謝料の算定・交渉をしてもらうべきでしょう。
弁護士法人心は,交通事故によるむちうち被害について多くのご依頼をいただき,示談金額等の交渉に臨んでいます。
交通事故でむちうちの被害でお悩みの方は,弁護士法人心にお気軽にご連絡ください。